データ伝送web講座

1. データやり取りの方法

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1.3. データを送る方法

1.3.(1) データと信号

1.3.(1-A) データを電圧で表す

◆ コンピュータが、2 進数を使用しているのは、ハードウェア、 すなわち電子回路が簡単になり、安くできるからです。したがって、 データ伝送も、ハードウェア上は、2 進数をベースにしています。
ディジタル回路、したがってコンピュータも、ディジタル データ を処理します。しかし電子回路は、電圧で動作しており、 電圧 そのものはアナログです。
◆ そのアナログ電圧に、一定の基準電圧 ( スレッショルド電圧 )を設けて、 その基準電圧よりも電圧が高いか低いかで、2 進数のゼロか 1 か を判定するようにしたものが、ディジタル回路 です (図.11)。

[図.11] ゼロと 1 との判定

ゼロと 1 との判定

実際には、多少の ノイズがあっても誤動作しないように、 ノイズマージン があります。

1.3.(1-B) 各種の信号を使う

◆ 以上ように、データを、具体的に電圧などで表わしたものを、 信号 といいます。データ伝送に使用する信号は、 電圧の他に、電流、電波、光などがあります。
無線伝送 には、 電波 (電磁波) が用いられます。有線では、電線の他に 光ファイバ を使用した 光ファイバ伝送も多く使用されています。その信号は光です。
◆ ディジタル回路は、通常、 プリント基板上に作ります。回路素子は、ほとんどが、 ディジタルIC (集積回路)で構成されます。

1.3.(2) 単純なデータの受け渡し

1.3.(2-A) ドライバとレシーバ

◆ 箱と箱を結ぶ程度の 簡単な伝送では、普通のディジタル IC を使用することもできます。
しかし、データ伝送の線路は、一般に、ノイズ環境が悪いところ を通します。通常は、より強力なノイズに強い IC、 またはトランジスタなどの素子で組んだ回路を使用します。
伝送用の強力な送信用の素子をドライバ 、受信用の素子を レシーバ と呼んでいます。ただし、普通のディジタル IC であっても、使用目的が伝送やインターフェースの場合には、 ドライバ/レシーバの名を使用することも多いのです。
◆ 信号を送るためには、2 本の線で、 回路 を構成する必要があります。この 2 本で 1 組の伝送線路のことを、 1 回線 といいます。
ただし、1 本は独立した線が必要ですが、もう 1 本は、 他の信号と、 共用のグラウンド線を使用することができます。 この場合、見掛け上は 1 本ですが、共用の戻り線が あることを忘れてはなりません。

1.3.(2-B) ステータス方式

◆ データ受け渡しの、最も単純なやり方を、ステータス方式 といいます(図.12)。

[図.12] ステータス方式

ステータス方式

◆ 図は、1 本の線で書かれていますが、これは 1 回線を意味します。 この講座では、通常、1 本の線で、1 回線を表します。
図では、ドライバ/レシーバを使用していますが、プリント基板内 などでは、ドライバ/レシーバではなく、通常の IC を使用して 差し支えありません。
◆ 送信側は、今自分がどのような状態(ステータス)にあるかの情報 (1 ビット)を、 常時出力しています。受信側は、送信側のステータスを読みたいとき、 随時それを読み込みます。
この方式は、とくにデータ伝送に固有な方式ではなく、 通常のディジタル回路の受け渡し方です。


1.3.(3) 大量のデータを送る

1.3.(3-A) 時間的に逐次送る

◆ ステータス方式では、大量のデータ受け渡しはできません。 大量のデータを伝送するためにには、データを時間的に次々と 受け渡すことが必要です(図.13)。

[図.13] データを時間的に逐次送る

データを時間的に逐次送る

◆ 図のように、データの 0/1 などを、物理的な信号波形 で表したものを、符号 と呼びます。
図の例では、1 ビットの期間電圧がハイであるか、ローであるか によって、1 と 0 とを区別しています。このような表し形をした符号を NRZ 符号 といいます。NRZ 符号は、最も単純で、 基本的な符号です。
◆ ところで、コードの日本語訳は、符号です。したがって、本来コードと 符号は同じ意味を持っています。そして、コードも符号も、1.2.(1-C) に示した「 コード」の意味と、ここに示した符号の意味との、 両方の意味を持っています。
◆ しかし、同じ言葉が、2 つの意味を持っていると、 混乱の原因になります。そこで、この講座では、とくに両者を区別して、 下記のように定義します。この区別は、この講座に固有のものです。
   コード 0 と 1 などで、文字などを表すこと
   符号   特定の信号パターンで、 0 と 1 などを表すこと

1.3.(3-B) 直列伝送と並列伝送

◆ 図.13 のような信号を、1回線で送る方式を 直列伝送 (シリアル伝送 )、 複数回線を使用して、複数のデータを同時に送る方式を 並列伝送 (パラレル伝送 )といいます。
同じデータ切り換え速度であれば、並列伝送(並列 n ビット)の方が、 データ伝送速度が n 倍になります。この意味で、並列伝送の方が、 高速伝送に適しています。
ただし超高速では、並列伝送には技術的な問題があるので、 逆に、直列伝送が使われています。
◆ コンピュータ内部のデータは、 バイト 単位、またはそのコンピュータによって決まる ワード を単位として、処理されます。ワードとは、 コンピュータがプログラムを実行するときの処理単位で、 低性能のマイコンを除いては、通常複数バイトから成ります。

[注] コンピュータは、8 ビット CPU とか、32 ビット CPU とか呼ばれます。そのビット数が、コンピュータの ワード長さです。一般にコンピュータは、そのワード長さが長い方が、 高性能です。

◆ 直列伝送では、このバイトまたはワードの並列のデータを、 直列に変換して送信します。並列伝送でも、並列伝送の ビット数と、 コンピュータでの処理長さが異なる場合には、その長さを変換します。

1.3.(4) 伝送の方向性

1.3.(4-A) 単方向と双方向

◆ 伝送には、単方向伝送 双方向伝送 とがあります(図.14)。

[図.14] 単方向と双方向

単方向


1.3.(4-B) 全 2 重と半 2 重

◆ また、全 2 重 伝送(図.15)と、半 2 重 伝送(図.16)とがあります。

[図.15] 全 2 重伝送

全 2 重伝送

◆ 全 2 重伝送は、双方向同時に伝送する方式です。

[図.16] 半 2 重伝送

半 2 重伝送

◆ 半 2 重伝送は、図のように、1 回線しかないので必然的に 交互伝送になるものと、ハードウェアは 図.15 のように全 2 重可能であるが、ソフトウェアで 交互伝送とするものと、両方があります。


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