データ伝送web講座

2. ネットワーク伝送

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2.1. ネットワーク伝送とは

2.1.(1) 概   要

◆ データ伝送では、1 対 1 のやり取りだけでなく、ネットワークを 組んだ、ネットワーク伝送 が使用されています。 ネットワークとは、網状のことですが、1 本の伝送路で複数の 伝送を行っているものも、ネットワーク伝送に含めます。
ネットワーク伝送は、多数のものが、そのネットワークに参加 しますが、通常は、1 対 1 の伝送の集まりです。この点が、 同時に多数の相手に同じデータを送る、放送 と異なります。
◆ ネットワーク伝送には、特定の固定された相手とのみ通信を行う、 単純な1 対 1 の通信の集まりと、同時には 1 つの相手ですが、 多数の相手と切り換えて接続できる、交換 機能を持つもの、 とがあります (図.1)。

[図.1] 1 対 1 の集まりと交換機能を持つもの

1 対 1 の集まりと交換機能を持つもの

◆ ただし最近は、データ伝送でも、本格的な放送機能を持つものが 出てきました。通信と放送は、法律上、別扱いですが、 この垣根を取り外す必要が生じています。なお、この講座には、 放送は含みません。

2.1.(2) ネットワークの形態

◆ ネットワーク伝送は、いろいろな立場から分類できます。ネットワーク の形から分類すると、図.2 のようになります。なお、 ネットワークの形態のことをトポロジ といいます。

[図.2] ネットワークのトポロジ

ネットワークのトポロジ

◆ 図中の□は伝送装置です。○は伝送利用するユーザーの装置です。 図の、バス形やループ形は、ユーザーの装置が伝送装置を 内蔵している例です。ネットワーク上の伝送装置のことを、 「ノード 」と呼んでいます。
伝送を行うユーザー側の装置を、データ端末 といいます。 しかし、この言葉は、最近はあまり使われません。そこで、 この講座では、「デバイス 」と呼ぶことにします。
スター は通常トリーに含めて、バス ループ トリー の 3 つに分類します。
◆ ネットワークの形態は、トポロジ(物理的な形態)のほかに、 論理上の形態を考える必要がある場合があります。これについては、 具体例が出てきたときに説明します。

2.1.(3) インターネットワーク

◆ 複雑なネットワークでは、複数のネットワークが集まって一つの システムを構成しています。これを、インターネットワーク といいます 。
単にネットワークと呼んで、とくに区別しないことも多いのですが、 この講座では、区別して表します。
なお、ネットワークとインターネットワークの両方を含むときで、 とくに両方を含むことを明示する必要がないときは、この講座でも、 ネットワークと呼びます。
◆ 典型的なインターネットワークのトポロジに、2 種類あります。 図.3 は、最も一般的な形で、とくに ブロードに多く見られる形です。トリー形の変形と考えることが できます。

[図.3] インターネットワーク(幹線/支線形)

インターネットワーク(幹線/支線形)

幹線は、ループ形のものもあります。

◆ 幹線から支線が枝分かれする方式です。大規模なシステムでは、 支線が複数段になります。図は、2段階の例です。最近では、 大規模であっても段数は少なくなる傾向にあります。
これは、個々のネットワークの長さ、伝送容量が大きくなっているので、 少ないネットワークで大規模なシステムを構成できるからです。
また、幹線が単一ではなく、複雑なネットワークを作っている場合 もあり、色々な変形があります。
◆ 図.4は、LAN で多く見られる形です。

[図.4] インターネットワーク(ゲートウェイ方式)

インターネットワーク(ゲートウェイ方式)

◆ ネットワークとネットワークとを結ぶ装置を、 ゲートウェイ (図の G)といいます。図の H は、 インターネットワークを利用するデバイスです。

2.1.(4) ブロードとローカル

◆ ネットワーク伝送は、また、ブロードとローカルとに分けられます。
ローカル は、企業の事業所(オフィス、工場)やビル などに設置されるネットワークです。
ローカルのネットワークの代表的なものが、LAN (ローカルエリアネットワーク)です。LAN は、比較的高度な機能 を持つローカルの代表的な機種です。ローカルには、LAN のほかにも 色々な機種が使用されています。
大規模な LAN は、インターネットワーク を構成します。

[注] LAN の呼び名は、本文に示したように、通常は、すべてのローカルでは無く、ローカル中の特定の機種に対して使用されています。これに対して、次に述べる WAN は、ブロードと同じ意味です。

◆ ブロード WAN   (ワイドエリアネットワーク)とも呼ばれ、公道をまたがる 伝送です(図.5)。

[図.5] ブロードとローカル

ブロードとローカル

◆ 図で (A) と (B) 間はブロードです。(C) と (D) もブロードです。 (E)、(F)間はローカルです。
これから分かるように、至近距離であっても、公道を通っていれば ブロードです。大きな工場構内で、10km 引いてもローカルです。
ブロードの伝送は、公道を跨りますから、誰もが自由に線を 引くことはできません。ユーザーは、認可された通信事業者が 敷設し提供する回線を利用することになります。これが、ブロードと ローカルの、最も大きな相違点です。

◆ 通信事業者には、第 1 種と、第 2 種とがあります。 第 1 種通信事業者 は、自ら通信設備を所有する事業者です。 これに対して第 2 種通信事業 者は、第 1 種通信事業者から 設備を借用して事業を行う業者です。
ただし、一般のユーザーにとっては、第 1 種、第 2 種の違いは、あまり問題になりません。また、通信の自由化に伴い、1 種/ 2 種の区分は無くなる方向にあります。
ブロードは、従来は、電話回線 が主体でしたが、最近では、 データ回線 (ディジタル回線)が多くなっています。 ブロードの多くは、幹線/支線方式のインターネットワークを 構成しています。
◆ 物理的に見て一つのインターネットワークは、一般に多くの目的用途に 共用されています。
ブロードのインターネットワークは、複雑に入り組んでいて、 色々な分け方ができます。事業者別に分けることもできますし、 目的用途によって分けることもできます。
ある一つのネットワークが、複数のインターネットワークの 構成要素になっていることも多いのです(図.6)。

[図.6] 複数のインターネットワークに属する

複数のインターネットワークに属す

◆ たとえば、電話回線は、電話網という大規模なインターネットワークを 構成しています。その電話網の末端部分の、電話局から各家庭、 事業所までの回線は、代表的なディジタル・インターネットワーク である、インターネットを始めとする、各種のインターネットワークに 利用されています。
◆ ブロードとローカルは、歴史的に見ても、技術的に見ても、 それぞれ別のシステムとして発展してきました。しかし最近では、 LANの技術が、ブロードにも応用されるようになってきました。
なお、この講座では、ローカルを主なテーマとして解説します。 ただし、基礎的な技術はブロードにも、ローカルにも共通です。


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