電気と電子のお話

4. 半導体の働き

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4.2. ダイオード


4.2.(1) ダイオードの構造と原理

4.2.(1-A) 構   造

◆ 半導体素子には、多くの種類があります。最も簡単、かつ基本的な素子が、ダイオード です(図 4.2-1)。図の一番上はダイオードの形状、2 番目がダイオードの図記号です。3 番目以降は、製品の外観です。ダイオードには、方向性がありますから、記号にも、製品にも、電流が流れる方向が示してあります。アノード (陽極)からカソード (陰極)の方向に、電流が流れます。

[図 4.2-1] ダイオード

ダイオード
ダイオード(2)

◆ ダイオードは、p 形半導体と、n 形半導体とを接合したものです(図 4.2-2)。接合 とは、密着して接触させることです。p 形半導体と、n 形半導体とを接合したものを、pn 接合 といいます。 図で、陰イオン (マイナスイオン )とはマイナスに帯電した原子陽イオン (プラスイオン )とはプラスに帯電した原子のことです。陰イオンと、陽イオンとを合わせて、単にイオン といいます。
なお、イオンは、半導体だけでなく、気体液体中にも存在します。

[図 4.2-2] ダイオードの構成

ダイオードの構成(a)

◆ 図の(a)は、拡散という現象を説明したものです。(a) (1)は拡散前、すなわち、未だ接合されていないときの状態です。p 形半導体(図の左側)と、n 形半導体(図の右側)は、それぞれの状態にあります。それが、接合によって拡散を起こします。拡散 とは、均一に混じり合う現象です。コップに水を入れ、そこにインクを 1 滴たらすと、最初インクはまとまっていますが、やがて、コップ内に均一に混じります。この現象が、拡散です。
◆ pn 接合では、接合によって、正孔電子が互いに拡散します。拡散によって、正孔と電子とがぶつかれば、中和します。これを再結合 といいます。完全に拡散すれば、全てが、再結合してしまいます。
実際には、拡散や再結合は、ある程度進行して、そこで止まります。その結果として、図の(a) (2)のようになります。接合部の付近だけが、拡散によって、再結合して、キャリアが存在しない部分になります。キャリアが存在しないということから、この部分のことを空乏層 といいます。空乏層にはキャリアがありませんから、正孔と自由電子とが行き来することを防ぐ壁になります。この壁のことを、電位障壁 といいます。

4.2.(1-B) 電圧を掛けると

◆ ダイオードに、電圧を掛けると、どのようになるでしょうか? 図 4.2_2の(b)は、これを説明する図です。
(b)(1)は、電圧を掛けないときです。図の(a)(2)、すなわち拡散終了後と同じですが、見やすいように、原子(イオン)の記入を省略して、正孔電子だけを示してあります。
◆ (b)(2)は、p 形半導体側にプラスの電圧、n 形半導体側にマイナスの電圧を掛けたものです。電圧を掛けることによって、空乏層が消滅し、正孔は n 形半導体の方に、自由電子は p 形半導体の方に移動しています。すなわち、電流が流れています。電圧を掛けたことによって、正孔と自由電子が補給されますから、電流が流れ続けます。この方向に電圧を掛けることを、順バイアス (順方向電圧 )といい、その電流を、順方向電流 といいます。
◆ 逆の方向、すなわち、p 形半導体側にマイナス、n 形半導体側にプラスの電圧を掛けたときは、図(b)(3)になります。空乏層が広がり、電流は流れません。これを、逆バイアス (逆方向電圧 )、逆方向電流 といいます。
◆ 以上の現象を、電圧と電流の関係にまとめると、図 4.2-3 のように、なります。

[図 4.2-3] ダイオードの特性

ダイオードの特性

◆ 図で、逆方向電圧が大きくなると、ダイオードが、逆方向電圧に耐え切れなくなって、急に電流が流れます。この現象を、降伏 といいます。また、その電圧を降伏電圧 といいます。

4.2.(1-C) 過渡特性

ダイオードにも過渡特性があります(図 4.2-4)。この過渡特性は、順方向電圧を掛けて、電流を流している状態で、ステップ状に、逆方向電圧を掛けたときに発生します。定常に達すれば、電流は流れませんが、一時的に逆方向に電流が流れることが分かります。図の trr のことを、逆回復時間 といいます。

[図 4.2-4] ダイオードの過渡特性

ダイオードの過渡特性


4.2.(2) ダイオードの種類と用途

4.2.(2-A) 概   要

◆ ダイオードの用途別分類を、図 4.2-5 に示します。

[図 4.2-5] ダイオードの用途別分類

ダイオードの用途別分類

4.2.(2-B) 主な品種

◆ 図に示されている品種の中で、ここで説明しておいた方が良いものだけを、以下に示します。
図で、スイッチの用途が幾つか示されています。ここでいうスイッチングとは、通常私達が、スイッチと呼んでいるものではなく、電圧を掛ける方向によって、電流が流れたり、流れなかったりすることを、スイッチング と呼んでいます。スイッチ の言葉は、このように、広い意味で使用されています。
◆ 可変容量ダイオード (バリキャップ )は、ダイオードに掛ける逆方向電圧の大きさを、変えることによって、空乏層の幅を変化させます。空乏層は、絶縁体ですから、コンデンサを形成します。空乏層の幅の変化は、このコンデンサのキャパシタンスを変えることを意味します(図 4.2-6)。一般のダイオードでも、この性質がありますが、とくに、この目的のために作られたものを、可変容量ダイオードといいます。

[図 4.2-6] 可変容量ダイオード

可変容量ダイオード

◆ 定電圧ダイオード (ツエナダイオード )は、ダイオードの降伏現象を利用して、一定の電圧を作るダイオードです。この一定電圧のことを、ツエナ電圧 といいます。一般のダイオードでは、降伏を起こすことは、ダイオードの破壊につながります。降伏を起こさない範囲で使用しなければ、なりません。定電圧ダイオードは、降伏に耐えるように作られています。電圧値は、2 〜 100 V の各種のものがあります。
◆ ショットキバリアダイオード は、逆回復時間が短いので、高速のスイッチングが可能です。
◆ 発光ダイオード (LED )は、ダイオードに順方向電流を流したときに、発光するダイオードです(図 4.2-7)。青、緑、黄、赤、赤外と、多くの色のものが作れます。赤外は、目には見えませんが、可視光線よりも遠くまで届くことから、通信用に使われています。

[図 4.2-7] 発光ダイオード

発光ダイオード

◆ 最近では、白色の明るいものができるようになり、一般の照明にも利用されはじめています。照明用には、発光部が平面の、面発光ダイオード などが使われています。
LED は、白熱灯に比べて、長寿命、省電力という特徴から、信号機 にも使用されています(図 4.2-8)。

[図 4.2-8] LED を使用した信号機

LED を使用した信号機     LED を使用した信号機     LED を使用した信号機

◆ フォトダイオード は、ダイオードに光を当てると電流が流れるダイオードです。光を検出する、光センサ として利用されており、デジカメの受光素子としても、使われています。デジカメでは、フォトダイオードが、平面状に並んでいますから、受光により発生した電荷を、2 回の転送によって、直列に取り出します(図 4.2-9)。

[図 4.2-9] デジカメのフォトダイオードセンサ

デジカメのフォトダイオードセン



[コラム 4.2-1] ゲルマニウムの用途

★ ゲルマニウム は、シリコンや、炭素に近い元素です。電子材料としてのゲルマニウムのほかに、いろいろな用途が、あります。 先ず、ゲルマニウムは、炭素が有機物を作っているのと同様に、無機ゲルマニウム と、有機ゲルマニウム とがあります。
★ 無機ゲルマニウムは、酸素、塩素、アンモニアなどとの化合物となっており、自然界で多く見られます。無機ゲルマニウムは、毒性があり、食べることはできません。
★ これに対して、有機ゲルマニウムは、炭素 と結びついており、朝鮮人参、サルノコシカケ、ニンニク、ニラ、等に比較的多く含まれています。
ただし、朝鮮人参の薬効は おもにサボニン、ニンニクの薬効は おもにアリチアミンです。

★ しかし、有機ゲルマニウムも、薬効があると考えられており、有機ゲルマニウムを含むものが、健康食品として、各種発売されています。かなり高価なものもあります。
なお、健康食品とは、法律(薬事法)で定められた薬品ではないけれども、世間では、薬効があるとされている、食品のことです。
★ 純粋なゲルマニウムは、灰白色の固い物質で、銀のような金属光沢があります。

純粋なゲルマニウム

★ 上記の性質から、一般には、ゲルマニウムは金属である、と思われます。しかし、結晶がダイヤモンド型をしており、金属ではありませんから、展延性は、ありません。

ゲルマニウムの結晶

★ 有機ゲルマニウムに薬効があるので、それからの類推であるのか、それとも本当に効果があるのか、どちらであるかは分かりませんが、ゲルマニウムを身につけていると、健康に良いとされています。n 形半導体のゲルマニウムが、生体電流の乱れを整える力がある、とする説もあります。
★ ゲルマニウムを使用したブレスレット(腕輪)などが、販売されています。ゲルマニウムは、高純度のもの、ゲルマニウム原石 を使ったもの、有機ゲルマニウムのものなど、いろいろあるようです。これまた、値段はさまざまです。

ゲルマニウムを使用したブレスレット






4.2.(3) ダイオード応用回路

4.2.(3-A) 整流回路

◆ 代表的なダイオード応用回路を、簡単に説明します。
先ず第一は、整流回路です。整流 とは、交流直流に変換することです。整流と検波 は、同様な仕事ですが、商用電源など、低周波の場合は、整流と呼び、変調された高周波信号のときは、検波と呼んでいます。
◆  整流には、半波整流 と、全波整流 との 2 種類があります。半波整流を、図 4.2-10 に、全波整流を、図 4.2-11 に示します。いずれも、整流しただけでは、大きな脈流 (リップル )がありますから、ローパスフィルタによって、平滑 化します。
リップルは、整流したときに残る交流成分のことです。

[図 4.2-10] 半波整流

半波整流


[図 4.2-11] 全波整流

全波整流

◆ この図は、両方とも、ダイオードの順方向電圧による、電圧降下を無視しています。入力電圧が低いときは、順方向電圧による電圧降下を無視することはできません。しかし一般に、ダイオード応用回路の動作説明図は、順方向電圧による電圧降下を、無視した図面になってることが、多いのです。このお話でも、以降の図は、順方向電圧による電圧降下を無視してあります。
これは、ダイオードを理想特性で表した、と考えることができます。
◆ 半波整流は、簡単なことが特徴ですが、電源の半分しか利用していません。全波整流は、この点では、優れています。しかし、その代わり、ダイオードの順方向電圧による、電圧降下が、半波整流の 2 倍になります。電源電圧が低いときは、この点が不利です。
この両方の長所を兼ね備える方式もあります(図 4.2-12)。ただし、トランスセンタータップ 式のものを使用する必要があります。

[図 4.2-12] トランスのセンタータップを使用する

トランスのセンタータップを使用する

◆ 商用電源における、全波整流回路の設計法を、示します。電源の角速度を ω( = 2πf f : 周波数)、直流出力電圧を Vo、トランスの 2 次側電圧(最大値)を Vm、負荷抵抗を RL (負荷抵抗 RL は、出力電圧 Vo を出力電流 Io で割ったものです)、トランスの巻き線抵抗とダイオードの動作抵抗との和を Rs とします(図 4.2-13、動作抵抗は、コラム 4.2-3 参照)。

[図 4.2-13] 全波整流回路各部の値

全波整流回路各部の値

◆ 図 4.2-14 は、全波整流回路設計用チャート です。

[図 4.2-14] 全波整流回路設計用チャート

全波整流回路設計用チャート

◆ 先ず、ωCRL を求めます。仮に、ωCRL = 100 とします。また、RS / RL = 10 (図で線)であるとします。図の線のように、ωCRL =100 の点を垂直に伸ばし、パラメータ RS / RL = 10 (線)との交点を、水平に伸ばすと、Vo / Vm が求まります。

4.2.(3-B) リミッタ

◆ リミッタ は、電圧または電流を制限する回路です。最も簡単で、広く使われているのは、信号の電圧を、電源電圧(Vcc )と、グラウンド(GND)との間に保持する目的のリミッタです(図 4.2-15)。信号の電圧が、電源電圧と、グラウンドとの間にあれば、IC などの素子を破壊する恐れはありません。しかし、信号の電圧が、これを超えると、素子を破壊する可能性があります。すなわち、このリミッタは、素子を破壊から守るためのものです。

[図 4.2-15] 一般信号用リミッタ

一般信号用リミッタ 一般信号用リミッタ(a)

◆ これと類似のリッミタは、全てのディジタル IC に内蔵されています。ディジタル IC は、信号に乗ってくるサージから保護されています。
ただし、ディジタル IC に内蔵されている保護回路は、ダイオードの、電流容量が小さいので、大きなサージには、耐えられません。必要に応じて、外付けのリミッタを追加する必要があります。
◆ 外付けの回路も、図 4.2-15 と同じ構成で、差し支えありません。回路構成の差ではなく、IC に内蔵されているダイオードは、電流容量が小さいからです。
電源電圧と、グラウンドの中間の、ある特定の電圧でリミットを掛ける必要がある場合には、図 4.2-16 のリミッタを使用します。この回路は、小容量の、簡便な電源を作る回路としても、用いられています。シャントレギュレータ といいます。

[図 4.2-16] リミッタ

リミッタ

◆ 上記の用途に使用し、電圧を可変にすることができる IC もあります(図 4.2-17)。図に示すように、外付けの抵抗値を変えることによって、電圧を可変できます。

[図 4.2-17] 可変シャントレギュレータ

可変シャントレギュレータ
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