電気と電子のお話

6. アナログ IC

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6.3. 電   源

6.3.(5) 電   池

6.3.(5-A) 電池の種類

◆  電池 (バッテリ )には、図 6.3-34に示すような、種類があります。まず、電池は、化学電池と、物理電池とに大別されます。化学電池 は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する装置です。物理電池 は、光や熱のエネルギーを電気エネルギーに変換します。

[図 6.3-34] 電池の種類

電池の種類

電池の種類(2)


◆  化学電池の中の、1 次電池は使いきり、すなわち、一度放電 したら、それで終わりの、電池です。2 次電池充電 することによって、繰り返し使用可能な電池です。
主な電池を、図 6.3-35 に示します。

[図 6.3-35] 各種の電池

マンガン乾電池
マンガン乾電池


アルカリ乾電池、リチウム電池
アルカリ乾電池    リチウム電池



アルカリボタン電池、酸化銀電池、空気亜鉛電池
アルカリボタン電池    酸化銀電池    空気亜鉛電池 (空気電池 )



ニカド電池、ニッケル水素電池
ニカド電池 (ニッカド電池 )   ニッケル水素電池


リチウムイオン電池
リチウムイオン電池

◆  図で、エネルギー密度というのは、単位体積(l、リットル)当り、または単位質量(kg)当りの、電池から取り出すことができるエネルギー量(Wh、ワット時)です。サイクル寿命 は、充放電可能な、繰り返し回数のことです。
◆  メモリ効果 というのは、電池を使い切らずに、浅い充放電を繰り返していると、電池の容量が減少してしまう現象です。メモリ効果に対する対策は、一度完全に放電させてしまうことです。この放電によって、回復します。
◆  自己放電 は、電池を使用しないで放置しておくと、自然に、少しづつ、放電してしまう現象です。
◆  2 次電池の中に、蓄電池があります。蓄電池 は、電解液 を使用した電池です。蓄電池では、鉛蓄電池が代表的です(図 6.3-36)。

[図 6.3-36] 鉛蓄電池

鉛蓄電池

鉛蓄電池 (鉛電池 )


◆  アルカリ蓄電池と、その鉛蓄電池との比較を図 6.3-37 に示します。

[図 6.3-37] アルカリ蓄電池および、鉛蓄電池との比較

アルカリ蓄電池
アルカリ蓄電池


鉛蓄電池との比較


◆  機器が動かなくなったまま、電池を入れっぱなしにしておくなど、機器を作動させることができる電圧以下まで、過度に放電してしまうことを、過放電 といいます。過放電は、液もれの原因となります。

◆  蓄電池の電解液を、固形化したものが、乾電池です(図 6.3-38)。

[図 6.3-38] 乾電池

(a) 種   類

乾電池の種類
マンガン電池    アルカリ電池    オキシライド (ニッケルマンガン電池 )


(b) 寸   法

乾電池の呼び方

乾電池


◆  燃料電池を、図 6.3-39 に示します(コラム 6.3-4 参照)。

[図 6.3-39] 燃料電池

燃料電池

燃料電池


◆  太陽電池を、図 6.3-40 に示します。

[図 6.3-40] 太陽電池

太陽電池 太陽電池(2)

太陽電池


6.3.(5-B) 電池の特性

◆  電池の基本特性は、出力電圧、出力電流と、その持続時間です。電池の出力電圧は、公称値があります。電池の種類による、出力電圧の公称値は、図 6.3-35 に示してあります。しかし、常に公称値が保たれるのではなく、条件によって変化します。これを放電特性 といいます。また、充電時の特性が、充電特性 です。一定電流値で充電したときの充電特性と、一定条件で放電を続けたときの、放電特性の例を、図 6.3-41 に示します。

[図 6.3-41] 電池の充放電特性の例(ニカド電池)

電池の充電特性の例 電池の放電特性の例

◆  充電も充電しすぎれば、過充電 となり、電池が、発熱、破裂、発火する可能性があります。過充電を防止するためには、規定の充電器 で充電します。充電器には、過充電防止回路 が、内蔵されています。
◆  電池の容量 は、電流 A と、時間 h との積 A h で表されます。それを、一定電流値で、1 時間で放電したときの電流値を、C と呼んでいます。
充電電流は、一般用ニカド電池で 0.1 C 程度で充電時間は14〜16 時間、急速充電用電池のとき 1〜1.5 C 程度で 1 時間以内です。


[コラム 6.3-2] コンピュータ

★ パソコン などの、コンピュータ は、最近では、ごく、当たり前の製品になっています。

パソコン     PDA

★ この講座を、見ている読者も、パソコンか、PDA (携帯情報端末 )(上図右)か、どちらかで見ていると思います。PDA もコンピュータです。また、ワープロ (ワードプロセッサ )も、ワープロの用途に特化したコンピュータです。制御装置 (制御器 )などと呼ばれているものも、ほとんどが、制御用に特化した、コンピュータです。
★ コンピュータは、文字通り、計算を行う機械です。計算を行うための機械(?)として、古くから使われてきたのは、ソロバン です。
コンピュータは、膨大な計算をこなす、スーパーコンピュータ (スパコン )

ソロバン     スーパーコンピュータ

から、家電などに組み込まれて使用されている、マイコン (マイクロコンピュータ )

マイコンが組み込まれている機器

まで、それこそ、ピンからキリまで、各種あります。
★ しかし、スパコンも、マイコンも、性能、規模や用途が異なるだけで、基本原理は、同じです。
コンピュータは、単に、計算を行うだけでなく、計算を含み、広く、データ処理 全般を行う、機械です。データを処理するのは、コンピュータだけでは、ありませんが、通常、データ処理というと、コンピュータによる処理を意味することが、多いようです。
★ コンピュータは、ハードウェアとソフトウェアとが、車の両輪となって、働きます。ハードウェア (ハード )は、金物 と訳され、機械装置 のことです。ソフトウェア (ソフト )は、機械装置の操作法に該当します。機械装置を自動車とすれば、ハードウェアは、自動車そのものであり、ソフトウェアは、自動車の運転法になります。
★ コンピュータは、5 つの機能からなります。これをコンピュータの、5 大機能 と呼んでいます。このコンピュータの機能を、人間が手計算を行うのに、たとえると、次のように、なります。

人間が手計算を行うのにたとえる

★ これを、ハードウェアに対応させると、制御装置 演算装置 記憶装置 (ストレージ )、入力装置 出力装置 の 5 つです。なお、制御装置と演算装置とを合わせたものを処理装置 、入力装置と出力装置とを合わせたものを入出力装置 といいます。

ハードウェアに対応させる

★ この機能を、さらに具体的に示すと、

ハードウェアへの対応

★ となります。ただし、上記の、機能とハードウェアとが、1 対 1 で対応しているのでは、ありません。
★ プロセッサ (処理装置、CPU 中央演算装置 )は、コンピュータ機能の中心であり、演算を実行する部分です。マイコンのプロセッサを、マイクロプロセッサ といいます。
図の CPU、メモリ、入出力インターフェースの部分を 1 つのチップにまとめた、ワンチップマイコン もあります。
なお、マイコンの言葉は、マイクロプロセッサの意味と、マイコンのシステム全体の意味と、どちらの意味でも、使用されています。
★ コンピュータは、その、プログラムを実行することによって、仕事を行います。コンピュータのプログラム は、コンピュータが実行すべき、仕事の内容を記述したものです。コンピュータは、そのプログラムを実行することによって、仕事を行います。逆にいえば、プログラムが入っていないコンピュータは、ただの箱に過ぎません。
★プログラムの内容、すなわち、コンピュータに実行させる仕事の内容は、自由に作ることが、できます。
プログラムの内容の自由度が高く、いろいろな仕事を行なわせることが、できることから、ソフトウェアと呼ばれているのです。
★ コンピュータのメモリ (主記憶装置 )は、プログラムを収容する場所であり、同時にプログラムを実行するためのデータを収容する場所であり、プログラムを実行する場所でもあります。
なお、メモリは、広義には、主記憶装置だけでなく、補助記憶装置 (外部記憶装置 )を含む場合が、ありますが、通常は、主記憶装置だけを、意味します。

メモリ

★ 人間が、手計算を行うとき使用する 1 冊のノートに、計算式も、そのデータも、さらに、計算実行の過程も書くことができるのと、同様です。

メモリの内容

★ プロセッサ、メモリ、入出力装置を結ぶ、共通の信号線を、コンピュータバス といいます。
★ さて、コンピュータのメモリには、RAM とROM とがあります。RAM は、読み書きが自由な、メモリで、最も一般的なメモリです。読むとは、メモリに保存されているデータを取り出して読むことです。メモリを読んでも、メモリの内容は、そのまま保存されます。書くとは、メモリにデータを書きこむことで、次に同じところに、別のデータを書きこむまで、メモリの内容は、保存されます。
★ RAM は、コンピュータの電源を切ると、その内容は、消えてしまいます。これに対して、ROM は、電源を落としても、その内容が、消えないメモリです。
また、フラッシュメモリ という種類の、メモリがあります。ROM は、一度書き込んだら、書き変えることが、できません。フラッシュメモリは、RAM と同様に、読み書き自由ですが、ROM と同様に、電源を落としたときに、その内容が保存されます。
★ RAM も、バッテリによって、RAM の電源が供給され続けるように、なっていれば、電源スイッチを切っても、その内容が保持されます。これを、メモリバックアップ と呼んでいます。RAM は、単に内容を保持するだけであれば、その消費電力は、僅かです。メモリバックアップ用に用いる RAM は、とくに、内容保持時の消費電力が小さい機種を選びます。バッテリも、メモリバックアップに適したバッテリを使用します。
★ メモリバックアップに適したバッテリを示します。

メモリバックアップに適したバッテリ


★ 図で、トリクルタイプというのがあります。これは、トリクル充電に適した、タイプのバッテリです。トリクル充電 とは、常時、微小電流で充電しつづける方式の充電で、メモリバックアップ用のバッテリの充電に利用します。
★ メモリバックアップ回路 の例を、示します。

メモリバックアップ回路

メモリバックアップ回路のタイムチャート

★ コンピュータの、詳細については、9.2.(1)を参照して下さい。
また、コンピュータのソフトウェアについては、次の、コラム 6.3-3 を参照してください。


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