著書の紹介

プロセス計装における

ディジタル制御系の設計と改善


本の表紙

A5判 233ページ
発行日 1989年10月(初版)
著者 宮崎誠一
発行所 工業技術社



内容の紹介

● プロセス計装 〜化学、鉄鋼などのプロセスを対象とした制御システム〜 は、時代とともに大きく発展してきました。最近のプロセス計装では、ディジタル化が進んでいます。
● この本は、ディジタル・プロセス制御について、応用例を豊富に取り入れて、やさしく、かつ実際的な解説を行います。
● 全体的な構成は、別の著書であるパソコンで学ぶ自動制御の実用学パソコンで学ぶ自動制御の応用学(いずれもCQ出版)と似ています。
● しかし、この本はプロセス制御における実施例を中心としている点で、上記の2冊と大きく異なっています。

目   次

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内   容

第1部 プロローグ

● この本の導入部です。ディジタル・プロセス制御の本題に入る前に、アナログとディジタルの違い、従来のアナログ制御などについて概観します。

1. アナログとディジタル
アナログとディジタルの基本的性質、アナログとディジタルの違いについて解説します。

2. 自動制御とプラントの特性
プロセス制御の概要と、プロセス特性の解析方法について説明します。制御対象のプロセスは、一般に非線形です。制御の問題を取り扱うときは、線形近似を行い、線形システムとして取り扱います。

3. アナログPID制御
ディジタル制御を考える基礎として、これまで主に使用されてきた、アナログPID制御の基本について簡単に示します。


第2部 ディジタル制御の基礎

● 第1部をベースにして、ディジタル制御の基本について解説します。

4. ディジタルPID制御
ディジタル制御の特徴は、PID制御よりも高度な制御、アドバンスト制御を容易かつ安価に実現できることです。
ここでは、その基本になるディジタルPID制御について説明します。

5. 制御成績の評価
制御成績の評価方法を示し、それに基づくディジタルPID制御の特性を、アナログPID制御の特性と比較して解説します。

6. 最適調整
まず、アナログPID制御におけるPIDパラメータの最適調整法を示します。さらに、この手法をディジタルPID制御に拡張した、ディジタルPIDパラメータの最適調整法について解説します。


第3部 アドバンスト制御

● ディジタル制御のメリットは、単なるPID制御を行うことではなく、より高度なアドバンスト制御を行うことにあります。この本の中心であるアドバンスト制御について、プロセス制御における実例によって解説します。

7. アドバンスト制御とPID制御の変形
アドバンスト制御の概要を示し、その中でもっとも簡単な、PID制御を若干変形した制御について説明します。

8. 各種要素を付け加える制御
PID制御を基本として、それに各種要素を付け加えた制御について解説します。付け加える要素には、非線形要素と線形要素とがあります。
非線形要素の中で、折れ線は、制御対象の非線形性を補償して、制御対象を見かけ上線形とするのに利用します。線形要素の付加は、制御成績の改善に有効です。

9. 複合制御(カスケード制御)
本格的なアドバンスト制御方式として複合制御があります。複合制御は、ある一つの制御目的に対して、制御成績の向上を目的として、複数の制御ループを使用する制御方式です。
複合制御の中でもっとも一般的なものが、カスケード制御です。カスケード制御は、アナログ制御時代から多く使用されてきました。

10. 複合制御(フィードフォワード制御)
複合制御のもう一つの代表が、フィードフォワード制御です。
フィードフォワード制御そのものは、フィードバック制御とは全く別の制御方式であり、フィードバック制御と対照的な性質をもっています。その特性上の欠点から、フィードフォワード制御単独ではあまり利用されていません。
しかし、フィードフォワード制御とフィードバック制御を複合させることによって、優れた制御方式を構成できます。

11. 多変数制御
制御対象は一般に多変数のシステムです。一つの制御対象の中に、制御したい変数を複数含むことがあります。このような多変数を取り扱う制御を、多変数制御と呼びます。
プロセス制御では、多変数制御が多く使用されます。この章では多変数制御について解説します。多変数制御の代表例が、非干渉制御です。

12. バッチプロセスの制御
プロセス工業の近代化は、プロセスの連続化によって実現しました。これによって、きわめて効率の良い少種大量生産が可能となりました。
しかし、最近では再び多種少量生産が多くなっています。多種少量生産では、バッチプロセスが使われています。
バッチプロセスは、そのスタートアップ特性が問題になるため、バッチプロセス固有のアドバンスト制御が使われます。


第4部 新しい制御技術

● この本では、アドバンスト制御について、従来から多く使用されている制御理論に基づいた制御方式の範囲で取上げています。しかし、より良い制御成績を求めて、新しい制御理論に基づいた制御方式も利用されるようになってきました。
この第4部では、新しい制御技術に基づいた制御について解説します

13. 現代制御理論による制御
プロセス制御の制御対象は、一般に多変数のシステムです。多変数制御は、11に示したように、従来の制御技術でも取り扱うことができます。
しかし、現代制御理論に基づいた制御方式を採用することによって、より汎用性が高く、より高度な制御を行うことができます。

14. ファジィ制御
ファジィとはあいまいのことです。あいまいさを定量化することによって、あいまいな現象を数学的に取り扱うのが、ファジィ理論です。このファジィ理論を制御に応用したものを、ファジィ制御といいます。
熟練した人間が行う手動制御は、従来方式による自動制御よりも、優れた制御を行うことができます。この手動制御は、一般に非線形の制御です。ファジィ制御は、このような非線形な制御を行うのに適した自動制御方式です。

15. 操作部の進歩とディジタル制御
電気、機械系のフィードバック制御の分野では、操作部の技術の進歩、とくにパワーエレクトロニクスによる半導体制御素子の進歩が、革命的な変化をもたらしました。
これに比べると、プロセス制御の分野では、操作部の進歩は比較的的地味です。しかし、制御システムのディジタル化にともなった着実な進歩があります。
また、プロセス制御で広く使用されている調節弁は、制御のためにエネルギのロスを伴います。省エネの要求を満たすため、調節弁を使用しない制御方式が使用されます。



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