電気と電子のお話

8. インターフェース

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8.2. 各種のインターフェース

8.2.(2) パソコン インターフェース

8.2.(2-A) 概   要

◆  HDLC は、汎用インターフェースです。HDLC ないしは、その系統のインターフェースは、現在でも、あちこちで、活躍しています。しかし、縁の下の力持ち的な使われ方が多く、直接目に触れることは、あまり、ありません。
私たちの、目に、多く触れるインターフェースは、パソコン周辺のインターフェースです(図 8.2-9)

[図 8.2-9] パソコン周辺のインターフェース

パソコン周辺のインターフェース


8.2.(2-B) 基本インターフェース

8.2.(2-B-a) RS232C

◆  パソコン周辺のインターフェースとして、以前多く用いられていたのは、RS232C インターフェースです(図 8.2-10) (b) の、赤で囲んだコネクタが、パソコンの、RS232C コネクタです。RS232C インターフェースは、パソコンの必須のインターフェースでしたが、最近の一部の機種では、実装されていません。
◆  この RS232C は、元々は、モデムとモデムを利用して通信を行う機器(たとえば、パソコン)との、インターフェース規格です。しかし従来は、図 8.2-9 に示した、パソコン〜周辺装置、パソコン相互などの、各種接続にも、RS232C インターフェースが、広く利用されてきました。

[図 8.2-10] RS232C インターフェース

RS232C インターフェース       RS232C インターフェース

◆  RS232C は、アメリカの電子工業会である、EIA の規格、EIA232D のことです。以前 RS232C の名で、制定されていた規格が、改定されて、EIA232D になりました。しかし、RS232C の名が流通しています。RS232C と呼んでいますが、内容は、EIA232D のことです(実は多くは、さらに、それの、モディファイです)。
◆  RS232C は、規格上は、伝送距離も短く、低速です(規格では、最大 15m、19.2 k ビット/秒)。これは、電話回線用モデムとのインターフェースを、対象としているからです。実際には、低速であれば、長距離が、可能です(図 8.2-11)。

[図 8.2-11] RS232C の伝送速度と伝送距離

RS232C の伝送速度と伝送距離

◆  RS232C よりも、高速、長距離に対応するインターフェース規格として、RS422 RS485 とがあります。RS485 は、RS422 に対して、上位互換性がああ利ます。すなわち、RS485 の仕様は、RS422 の仕様を、カバーしています。RS485 の伝送距離と伝送速度とを、図 8.2-12 に示します。なお、RS232C は、コネクタの仕様などを含む規格であるのに対して、RS422/RS485 はケーブルだけの規格です。

[図 8.2-12] RS485 の伝送速度と伝送距離

RS485 の伝送速度と伝送距離

◆  モデムは、電話回線などを介して通信を行うときに、必要な機器です(図 8.2-13)。

[図 8.2-13] モデムを使う

電話ジャックを使う     モデムを使う     モデム

図(b)で、NCU というのがあります。一般の電話回線では、ダイヤルして相手に繋ぎます。NCU は自動ダイヤル装置です。まず、NCU で、相手に繋いでから、モデムで、データのやり取りを、行います。通常の電話回線用モデムは、NCU を内蔵しています(図(a))。
最近では、モデムは、パソコンに内蔵されるものが、多くなっています。この場合は、当然、RS232C インターフェースは、不要です。電話回線を、直接、パソコンの電話ジャック(ソケット)に接続します。
図(c)は、独立したモデムです。

8.2.(2-B-b) A D S L

◆  最近は、パソコンを、インターネットと、電話回線を介して接続するのに、ADSL が、多く使用されています(図 8.2-14)。ADSL も、ユーザー宅を結ぶ、末端の回線は、通常、電話回線を使用します。しかし、電話網とは、別のシステムです(コラム 8.2-4)。ADSL でも、ADSL モデム を使用しています。ADSL モデムも、モデムの一種です。しかし ADSL は、交換機を通しませんから、NCU は、使いません。また、従来のモデムよりも、高速です。

[図 8.2-14] ADSL を使う

A D S L

A D S L

◆  図の(a)は ADSL 専用回線使用、(b)(c)(d)は電話と共用の回線です。電話と共用の回線では、電話機と分岐するために、図の(b)(c)(d)に示したように、スプリッタ (ADSL スプリッタ )を使用しています。スプリッタが、ADSL モデムに内蔵されている製品も、あります。
◆  ADSL モデムは、パソコンの LAN 機能を使って、インターネットと、パソコンとを接続します。ADSL モデムと、パソコンは、LAN ケーブルで結びます。パソコンに LAN 機能が内蔵されていないときは、パソコンに LAN アダプタ (LAN ボード )を、挿入する必要があります(図 8.2-15)。

[図 8.2-15] LAN アダプタ

LAN アダプタ

◆  ADSL の詳細は、コラム 8.2-4 を、参照してください。


8.2.(2-B-c)ケーブル テレビ

◆  ケーブルテレビ (CATV )は、テレビ に特化したネットワークです(図 8.2-16)。

[図 8.2-16] ケーブル テレビ網

ケーブル テレビ網

◆  各地域毎に、サービスがありますが、全国的に網羅されているわけでは、ありません。CATV の普及率を、図 8.2-17 に示します。

[図 8.2-17] CATV の普及率

CATV の普及率

◆  テレビですから、当然、多チャンネルです(図 8.2-18)。最近では、ケーブルテレビだけでなく、インターネット接続サービスなど、テレビ以外のサービスも、テレビの空きチャンネルを使用して、サポートしています。

[図 8.2-18] CATV のチャンネル

CATV のチャンネル

◆  テレビは、それ自体が、数 M Hz / チャンネルの帯域を必要としますから、広帯域 (広い帯域)が必要です。CATV の電線は、広帯域が可能な、同軸ケーブルを使用しています。 しかし、それだけでは、減衰が大きいので、途中に、増幅器(図 8.2-16の TDA、BA)を挿入します。のタップは、各戸に引き込むための、分岐器です。
◆  最近では、CATV は、幹線には、同軸ケーブルよりも、減衰が少なく帯域も広い、光ファイバケーブルを使用して、末端だけを、同軸ケーブルにする方式が、多くなっています。

8.2.(2-B-d) F T T H

◆  FTTH は、ファイバ ツ ザ ホーム の略で、ユーサー宅までを含めて、全て光ファイバを使用するサービスです。100 M ビット/秒と、高速ですが、料金が、かさみます。1 本のァイバを複数世帯で共用して、料金を安くするサービスが、あります(図 8.2-19)。通常のインターネットの利用なら、共用タイプで十分です。ただし、付近に他の利用者が居ないと、共用できません。

[図 8.2-19] FTTH のサービス

FTTH のサービス

◆  以上の、ADSLCATV、FTTH は、従来の、モデムを利用する方法に比べると、伝送速度が、高速です。これらの、サービスを一括して、ブロードバンド サービスと呼んでいます。ブロードバンドは、広帯域、すなわち、帯域が広いという意味ですが、この場合には、単に、伝送底度が速いという意味で、広帯域の言葉が、使われています。ブロードバンドや広帯域は、この意味にも、多く使われています。

8.2.(2-C) モデム

◆  モデム (変復調装置 )は、変調と復調とを行う装置です。
ディジタルの信号は、パルス波形です。パルスには、角があります。角には高調波があり、高い周波数成分を含んでいます。一方、電話回線は、音声周波数帯域の信号だけしか、通しません(コラム 8.2-3)。
◆  電線自体は、高い周波数の信号を通します。しかし、電話回線の中には、交換機や、中継器 があります。この交換機や中継器が、音声周波数の信号しか、通さないのです。
ディジタル信号を、電話回線を通して送るためには、ディジタル信号を、アナログの音声周波数帯域の信号に、変換することが必要です。
◆  ディジタルの、パルス波形を、アナログの、音声周波数帯域の信号に変換することを、変調 といいます。また、変調された、アナログの、音声周波数帯域の信号を、元のディジタルのパルス信号に、戻す作業が、復調 です。
◆  なお、変調は、上記のように、ディジタルのパルス波形を、アナログの、音声周波数帯域の信号に変換するだけでなく、もっと広い意味を持っています。変調とは、基になる波形(搬送波)を変化させることによって、波形に信号を乗せることです。 たとえば、アナログの波形を、もっと高周波のアナログ信号に変換することも、変調です。
◆  基本的な、変調のやり方に、3 種類あります(図.8.2-20)。周波数変調、振幅変調、位相変調の 3 つです。

[図 8.2-20] 基本的な変調の方式

基本的な変調の方式

◆  変調の基になる正弦波形搬送波 (キャリア )、変調された信号を変調波といいます。振幅変調 (ASK )は、ディジタルの ゼロ / 1 を、搬送波の振幅の大小に対応させます。
周波数変調 (FSK )は、ディジタルの ゼロ / 1 を、搬送波の周波数の高低に対応させます。位相変調 (PSK )では、搬送波の位相に対応させます。
◆  なお、ASK、FSK、PSK は、ディジタル信号を変調したときの用語です。アナログ信号を変調したときには、それぞれ、AM FM PM と呼びます。
振幅変調は、最も簡単ですが、伝送上の性質が劣るので、単純な用途に限定されます。周波数変調と位相変調とは、変調のやり方は、異なりますが、変調波の性質は同じです。
◆  搬送波は、単一周波数の信号ですが、変調された変調波は、周波数帯域を持ちます。周波数変調は、一見して、周波数帯域を持つことが分かります。振幅変調や、位相変調は、単一の周波数のように、見えますが、振幅や、位相が遷移する部分に、周波数の広がりがあります。
◆  変調する前の、基になるディジタル信号(パルス波形)のことを、ベースバンド 信号といいます。ベースバンド信号を変調することによって、次のような、メリットが、あります。
(a) 無線では、電波にするために、変調は、必須です。無線でも、次の(b)の性質を、利用します。
(b) 変調し、そのキャリアの周波数を、変えることによって周波数多重化が可能になります(図 8.2-21)。多重化された信号の分離には、フィルタ(バンドパスフィルタ)を使用します。

[図 8.2-21] 周波数多重化する

周波数多重化する

◆  (c) 電線には、周波数特性があリます。長距離では、電線の周波数特性が、激しくなります。信号の周波数帯域が広いと、信号の歪みが大きくなります。変調によって、信号の周波数帯域が狭くなるので、波形歪みが、小さくなります。この結果として、周波数特性が激しい、長距離の伝送が、可能になります。

[コラム 8.2-3] 音声信号

★ 心地よい、不快な音、音にもいろいろあります。音楽は、時として、人に、感動を与えます。

オーケストラ

★ 音は、空気の振動が、耳に聞こえる現象です。耳で、音として聞くことができる、空気振動の周波数範囲を、可聴周波数 といいます。

周波数による音の分類

★ 人の可聴周波数を、さらに詳しく見ると、下図のとおりです。音声 に限れば、その周波数帯域は、かなり、狭くなります。電話は、通話を目的としており、音楽は、対象外です。したがって、電話の周波数帯域 は、さらに狭く、200〜3400 Hz です。

人の可聴周波数範囲

音声の分布範囲

★ 人は、言葉を持っており、言葉によって、情報を伝えます。このことが、他の動物を、大きく引き離して、地球を支配するにいたった、理由とされています。いるか は、会話をすると言われていますが、確かなことは、分からないようです。

いるか

★ 人は、単に、聴覚という点で比較すると、あまり、優れているとは、いえません。

動物の可聴周波数の範囲 動物の可聴周波数の範囲

★ こうもりは、暗闇の中を、自由に飛び回り、餌を捕らえています。これは、超音波 を、口や鼻から出し、対象物からの、反射波を検知することによって、眼の代わりをしているからです。

こうもり

★ この、超音波には、いろいろな作用があります。洗浄効果も、その一つです。

超音波応用機器





[コラム 8.2-4] ADSL について

★ ADSL は、物理的には、末端の回線に、電話回線を使用して、電話と多重化することができますが、一般の電話網とは、別のシステムです。図は、NTT 西日本の例ですが、その他も、同様です。
★ 図でプロバイダ は、インターネットへの接続サービスをおこなう、通信事業者 です。私達が、インターネットを利用するときは、通常、プロバイダと契約します。
メタル回線 は、光ファイバに対する言葉で、銅を使った電線のことです。

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ADSL のシステム

★ ADSL は、ユーザが、電話回線を介して、インターネットと接続するのに、利用されます。に示したように、ユーザは、1 回線(図のメタル回線)を、電話と多重化して、使用することができます。
★ ADSL は、下図に示すように、かなり、高速です。とくに、下りが高速です。下りとは、中央から、ユーザに向かう方向です。
ADSL は、歴史的には、まず、1.5 M ビット/秒から、スタートし、その後次第に高速のサービスが、追加されて、きました。現在では、最大 50 M ビット/秒です。

ADSL の伝送速度

★ ユーザが、インターネットを利用するときは、上りは、要求が、ほとんどです。この要求に対して、下りで、要求されたデータを伝送します。下りが高速であることは、都合が良い性質です。
★ 図の伝送速度は、最大となっています。伝送速度は、局からの距離などに依存して、変化します。最大値を示しました。電線には、周波数特性があり、距離が長いと、信号の減衰量が大きくなります(7.2.(3-B-a))。

ADSL の伝送速度期待値

★ 上の図は、標準的な値であり、実際には、個々の回線によって、かなり、ばらつきます。下図は、伝送速度 40 M ビット/秒の回線の、ばらつきの例です。

ADSL のばらつき

★ ADSL が、上記のように高速なのは、ADSL 自体が、多重化の技術を使っているからです。下図に示すように、1.5 M ビット/秒のとき 25 本、12 M ビット/秒のとき223 本、24 M ビット/ 秒のとき 256 本を追加して、多重化しています。

ADSL の多重

★ ADSL を含み、ブロードバンド全般は、下図のように、なります。

ブロードバンド</a>全般

★ 図で、xDSL は、ADSL を含み、電話回線を使用した、高速のディジタルサービスの総称です。ISDN、MODEM(モデム)、PHSCATV は、それぞれの項を参照してください。FWA は、光ファイバ伝送無線とを組み合わせたサービスです(下図)。

FWA

★ FTTH は、末端まで、光ファイバを使用します。下図に示すように、FTTB FTTP FTTC など、末端を銅線と組み合わせる方式も、あります。

FTTB、FTTH、FTTP、FTTC

★ ブロードバンドの普及率を、下図に示します。ADSL が多く使用されていますが、FTTH の延びが、著しいことが分かります。将来は、FTTH が主流になると、考えられます。

ブロードバンドの普及率


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