電気と電子のお話

9. 電気・電子機器

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9.1. 電気機器

9.1.(5) 家庭電気

9.1.(5-B) AV ・ 情報家電

9.1.(5-B-a) テレビ

◆  AV 情報家電 を、図 9.1-135 に示します。

[図 9.1-135] AV 情報家電

電話機 / FAX テレビ
ビデオ カーナビゲーション
ポータブル MD DVD
オーディオ コンポ
ホームシアター ディジタルカメラ
ゲーム機_


◆  電話機は、最も早くから普及しました。情報家電 の名が、まだ無かったときからの、製品です。最近の、家庭用電話機は、多くが、FAX 付です。電話機は、8.2.(3-B-b)で、FAX は、コラム 5.2-4 で、既に説明しました。ここでは、図 9.1-135 のテレビ以降について、説明します。
◆  テレビ (テレビジョン )は、3 次元 の空間を、2 次元 の動画像として、音声と共に、放送します。
テレビの歴史は、大正15年(1926年)に、さかのぼります。高柳健次郎が、遠隔の場所から、ブラウン管に、「イ」の字を映し出したのが、最初です(図 9.1-136)。

[図 9.1-136] テレビの始め

テレビの始め

◆  テレビの呼び名は、テレビ放送、テレビ番組、テレビ受信機など、いろいろな意味で使用されていますが、まず、テレビ放送 について、説明します(図 9.1-137)。現在の、普通のテレビ放送は、図の(1)の、480iSD 放送 飛び越し走査方式です。
ハイビジョン放送は、現在 既に開始されていますが、将来的には、現在の通常放送は、廃止され、ディジタル化された、ハイビジョン放送 (HDTV )(図の(3)(4)(5))に統一されます。

[図 9.1-137] テレビ放送

テレビ放送

◆  走査方式 に、飛び越し というのがあります。これは、飛び越し走査方式 のことです。飛び越し走査方式 (インターレースモード )というのは、当時の技術では、高速の伝送が、できなかったために、採用された方式です。インターレースモードでは、1 フレームの画像を表示するのに、図 9.1-138のように、一つ置きの走査を、2 回に分けて行います。この、インターレースによって、動きを滑らかに見せます。

[図 9.1-138] 飛び越し走査方式

飛び越し走査方式

◆  テレビ受像機 (テレビ受信機 )は、現在では、いろいろな方式のものが、ありますが、以前は、CRT ディスプレイ(ブラウン管)方式だけでした。
テレビでは、1 秒間に 30 フレーム(画面)の割合で、画像を切り換えることによって、動画像 を作り出しています。
画面は、フレーム毎に、非連続に変化しますが、残像効果によって、動いているように見えます。
◆  現在では、ブラウン管以外に、液晶ディスプレイや、PDP ディスプレイなどのディスプレイ (表示装置)も、多く使われています(図 9.1-139)。
CRT ディスプレイ は、性能的には、優れていますが、奥行きが長いことが、欠点です。液晶ディスプレイやPDP ディスプレイは、CRT ディスプレイと比較して、奥行きが短いので、フラットパネルディスプレイ (薄形テレビ )と、呼ばれています。

[図 9.1-139] 各種のディスプレイ

各種のディスプレイ

◆  テレビの大きさは、対角線上の長さを、インチで表したものを、xx形と呼び、この xx で表します。テレビが出始めた頃は、14 形がほとんどでしたが、最近では、大形化が進み、据え置き形テレビ では、20 形以上が多くなっています。一方、携帯形テレビ では、小形化が進み、小さい方では、携帯電話を利用するテレビが、あります。
◆  テレビの縦横比 は、当初 4 X 3 でしたが、最近では、ワイドテレビ (16 X 9)が、多くなっています。テレビ以外も含めて、各種影像のスクリーン縦横比 を、図 9.1-140 に示します。

[図 9.1-140] 各種影像のスクリーン縦横比

各種影像のスクリーン縦横比

◆  大形のテレビでは、映画のように、画像をスクリーンに、映し出す前面投射形テレビ が あります。投射形テレビ には、背面投射形テレビ もあります(図 9.1-141)。

[図 9.1-141] 背面投射形テレビ

背面投射形テレビ     背面投射形テレビ

◆  最近のテレビは、カラーテレビ ですが、当初は、モノクロテレビ でした。カラーテレビの色は、色光の 3 原色、すなわち、RGB によって、作られます。
◆  CRT ディスプレイによって、カラーを映す原理を、図 9.1-142 に示します。CRT ディスプレイの電子銃からは、RGB それぞれの、ビームが発射されます。CRT ディスプレイのフェイスガラス(参照)の、蛍光面には、RGB それぞれの蛍光体が、塗ってあります。たとえば、R のビームは、蛍光面の R の蛍光体を照射します。

[図 9.1-142] CRT ディスプレイでカラーを映す

CRT ディスプレイでカラーを映す

◆  CRT ディスプレイの色度図を、図 9.1-143 に示します。比較のために、銀塩写真 (従来のフィルムを使用する写真)の色度図(の FILM)も示します。CRT ディスプレイの色再現性は、銀塩写真よりも、かなり、劣っています。しかし、これでも、液晶ディスプレイなどと比べると、かなり、広い範囲をカバーしています。

[図 9.1-143] CRT ディスプレイの色度図

CRT ディスプレイの色度図

◆  テレビは、世界的に見ると、3 つの方式があります。第 1 は、日本、アメリカなどで使われている、NTSC 方式 (図 9.1-137の(1))と呼ばれる方式です(NTSC 方式についての詳細は、「ここ」をクリックしてください。戻るときは、ブラウザ上部の「戻る」を使用)。
ヨーロッパやその他の国々では、PAL 方式 、および SECAM 方式 が、混在して使われています(図9.1-144)。

[図 9.1-144] テレビの各種方式

テレビの各種方式 テレビの各種方式


[コラム 9.1-10] 液晶ディスプレイ

★ 液晶 は、液体と、固体 との中間の性質を持った、物質です。一般の物質は、気体液体、固体(結晶)の、3 つの状態を持ちます。これに対して、液晶を形成する物質では、固体(結晶)と液体との中間に、液晶と呼ばれる状態が、あります。

液晶 液晶

★ 気体液体は、自由に変形しますが、固体は、外力を加えなければ、変形しません。また、固体のうちで、結晶は、分子が規則正しく配列されています。
★ 液晶の分子は、細長い棒の形をしています。そして、次の性質を持っています。
     (1) 配向膜 (溝付きの板)(下図参照)があると、板の溝に沿って、液晶が、並ぶ
     (2) 電圧を掛けると、液晶分子の並び方が、変わる
     (3) 光は、液晶分子が、並んだ向きに沿って進む
★ 2 枚の配向膜を、それぞれの方向性が、直交するように重ねて、その間に、液晶分子を挟みます(下図左)。液晶分子は、図のように配向膜の向きに沿って、ねじれた並び方をします。これに、電圧を掛けると、下図右のように、液晶分子が整列します。

_電圧を掛けると

★ この性質を利用して、電圧で動作する、光シャッター を作ることが、できます。下図のように、その向きが直交する偏光フィルタで、液晶を挟みます。
液晶は、電圧を掛けないときに、偏光面が、90°ねじれるようにします(図の)。この状態では、光は液晶を透過して行きます。
電圧を掛けると、図ののようになり、液晶は、光を遮ります。

_光シャッター

★ 液晶は、発光するのではなく、シャッターの役をするだけです。したがって、液晶ディスプレイは、光源と組み合わせる、必要があります。この光源のことを、バックライト といいます。
★ CRT ディスプレイは、原理的に、奥行きが必要です。液晶ディスプレイ (LCD )は、薄形にすることが、できます(下図)。
★ ただし、最近は、かなり改良されていますが、カラーの場合、CRT ディスプレイと比べて、液晶ディスプレイは、色再現性が、劣ります。下図色度図において、100% は、CRT ディスプレイです。液晶ディスプレイは、CRT ディスプレイを基準として、示してあります。の 45 % は従来の液晶ディスプレイ、の 72 % は改良形の液晶ディスプレイの特性です。

_液晶ディスプレイ       _液晶ディスプレイの色度図

★ また、これも、かなり改善されていますが、液晶ディスプレイは、正面以外の方向から見たときの、視認性が劣ります。これを、視野角 特性と言います(下図)。下図は、視野角による、見え方の違いを示します。視野角特性が無ければ、のように見えますが、視野角特性があると、視野角特性によって、図ののように、見えてしまいます。

_視野角特性       _視野角特性

★ 液晶ディスプレイは、応答性も、高くありません。しかし、これも、実用に差し支えるほどでは、ありません。



[コラム 9.1-11] PDP ディスプレイ

★ CRT ディスプレイに代わる、LCD と並ぶ、もう一つの、ディスプレイが、プラズマディスプレイ (PDP ディスプレイPDP )です。プラズマディスプレイは、プラズマを利用した、ディスプレイです。
★ ここでは、まず、プラズマについて、説明します。
物質には、固体、液体、気体の 3 つの状態が、あります(図 9.1-95 参照)。しかし、実は、この 3 つの状態のほかに、第 4 の状態が存在します。
この第 4 の状態のことを、プラズマ といいます。プラズマは、下図に示すように、分子から電子が飛び出した状態です。すなわち、分子は、イオンになっています。

第 4 の状態がある

★ オーロラは、天然現象のプラズマです。太陽の内部も、水素がプラズマ状態になり、核融合反応が起っています。
このことからも推察されるように、プラズマは、非常に広い範囲の状態が存在します。

代表的なプラズマのパラメータ

★ 蛍光灯の管内もプラズマです。蛍光灯の電極から、電子が飛び出し、プラズマ中の、水銀原子に衝突ます。この衝突のときに、紫外線が発生し、その紫外線が、蛍光灯の管壁に塗ってある、蛍光体に当り、可視光線になります。

蛍光灯の原理

★ プラズマディスプレイは、プラズマの発光を利用した、ディスプレイです(下図左)。液晶ディスプレイと同様に、画素毎に、プラズマセル (発光素子)(下図右)を、並べたものです。

プラズマディスプレイ       プラズマセル

★ プラズマディスプレイは、色再現性が良いことも、特徴です。の色度図の「新パネル」が、プラズマディスプレイの色度図です。プラズマディスプレイの色再現性が、CRT ディスプレイの色再現性を、上回っていることが、分かります(特に緑)(NTSC は、本文NTSC 方式を参照)。

_プラズマディスプレイの色再現性




[コラム 9.1-12] SED ディスプレイ

★ SED ディスプレイ は、フラットパネルディスプレイの新顔です。SED ディスプレイの発光原理は、CRT ディスプレイと同じです。SED ディスプレイは、微小な CRT ディスプレイを、画素毎に、多数並べた構造となっています。この点では、液晶ディスプレイや、プラズマディスプレイと、同じです。

SED ディスプレイ

★ したがって、色再現性応答は、CRT ディスプレイと同じであり、優れた特性を、持っています。



[コラム 9.1-13] 有機 EL ディスプレイ

★ 有機 EL ディスプレイ も、新顔です。EL は、エレクトロルミネセンスのことで、有機 EL は、有機物による、エレクトロルミネセンスです。有機 EL ディスプレイは、フレキシブルなシートにすることができるという、他のディスプレイには無い、大きな特徴があります。色再現性も、良好です。

有機 ELの構造


有機 ELの色度図

★ このフレキシブルという特徴を活かした使い方を含めて、有機 EL ディスプレイは、次のような、用途が考えられています。

有機 ELの用途

有機 ELの用途

★ さて、いろいろな、ディスプレイを、見てきましたので、ここで、比較してみましょう(ただし、これまで述べたものの、全ての比較では、ありません)。

各種ディスプレイの比較


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